ミャンマー車市場、「中国ブランド」台風の目

ミャンマーで広がり始めた新車市場で中国メーカーが攻勢をかけている。東風汽車集団(湖北省)はヤンゴン市にショールームを開設した。ミャンマーは昨秋の規制緩和で法人による新車輸入が解禁されたが、まだ市場は限られる。だが中国勢はまず同国に足場を築き、日本車が圧倒的なシェアを占めてきた東南アジア市場に食い込もうとしている。

 

 最大都市ヤンゴン中心部。中古車整備会社などが立ち並ぶ一角に総ガラス張りのショールームがひときわ目を引く。約400平方メートルの広々とした店内には多目的スポーツ車(SUV)やピックアップトラックなど排気量1600cc以上の中大型車がずらり。今年2月に東風汽車が開いたミャンマー初の販売店だ。

 

 接客スペースに座ると、すぐに女性スタッフがお茶とカー雑誌を差し出すなどサービスも手厚い。だが最も顧客を引きつけるのは価格の安さだ。SUV「OTING」は約4000万チャット(400万円)と同排気量の日本製SUVより3割以上安い。

 

海運会社に勤務するアウン・ミン・テイさんは中古で買ったトヨタのセダンに乗っているが家族用に2台目の購入を検討中。「日本車の品質も捨てがたいが、中国車の低価格も魅力」と語る。同店の販売責任者のチー・カン・トゥン・マネジャーは「品質と価格の高いバランスが東風の強み」と売り込んでいた。

 

 昨年末の予約受け付け開始以降すでに20台以上を販売した。年間販売目標は100台で、同社の東南アジアの販売拠点の中でも特に高いが、出足は順調だという。地方都市でのショールーム新設も検討する。

 

 東南アジアは市場開拓に先行した日本車が9割のシェアを占め、欧米や中国勢が割って入るのは難しかった。だがミャンマーではまだ横一線。「今なら東南アジアに攻め込むためのくさびを打ち込める」(東風汽車)との思惑もある。

 

 ミャンマーでは外貨流出の抑制を名目に自動車輸入が厳しく制限されてきた。2011年春の民主化後、中古車の輸入規制は段階的に緩和されたが、新車輸入は限られた個人にしか認められなかった。現地メーカーは育っていないため、市場の90%以上は現地業者が輸入した日本製中古車で占められてきた。

 

 だが昨年秋に新車輸入が法人に解禁されると新車が増え始めた。ミャンマーの13年の乗用車の新規登録台数は約10万台。まだ中古が圧倒的だが、新車も1~2割程度を占めるとみられる。

 

 ミャンマーの1人当たり国内総生産(GDP)は900ドル程度と東南アジア最低水準。だがヤンゴンなどの都市部は2000ドル台に達しているようで、市場の拡大が期待できる。

 

 2月には北京汽車集団(北京市)がヤンゴン市にショールームを開設した。同社はミャンマー国境に位置する中国の雲南省瑞麗市で15年にも年産数万台の新車組み立て工場を稼働させる計画だ。ミャンマーへの輸出拠点とする狙いもあるとみられる。上海汽車集団(上海市)も進出を検討しているようだ。

 

 ミャンマーでは10年に政府系企業との合弁会社を清算したスズキが昨年、小型トラックの現地生産を小規模ながら再開した。日産も15年以降、マレーシアの提携先企業に委託する形でミャンマーで乗用車を生産する構想だ。市場拡大に伴い将来的には生産拠点に育つ可能性もある。

 

日本経済新聞 6月10日