1.6億人市場 いざバングラへ

インドとミャンマーの間に位置するバングラデシュで商機が広がっている。日本政府が中長期に約6000億円の経済支援を表明するなど、インフラ受注の機会が増えるからだ。同国の経済成長に伴い、進出する日本企業は直近3年で2倍の約180社に急増しており「チャイナプラスワン」の有力国とみるアパレル業界や、人口1億6000万人の市場を狙うメーカーの動きも活発化している。(上原すみ子)

 

5月に来日したバングラデシュのハシナ首相と会談した安倍晋三首相は、今後4~5年で同国のインフラ整備に約6千億円の経済支援を行うことを表明。これを受け、ハシナ首相も「10年以上にわたって年率6%の成長を続けるバングラデシュの商機は大きい」と述べ、日本からの投資拡大を呼びかけた。

 

日本は高効率の石炭火力発電所の建設や、5都市の都市インフラの整備、石炭・液化天然ガス(LNG)基地を含む広域開発を提案した。

 

石炭火力は、東京電力や東電設計が長年、電源開発の基本計画作りに協力してきた案件で、世界最高効率の環境対応と電力安定供給に貢献できるという。来年以降の入札には同技術を持つ重電メーカーに加え、東京電力グループや大手商社も関心を示す。

 

国際協力機構(JICA)は、4月に同国のエネルギーや電力関連の政府幹部を日本に招聘(しょうへい)し、最先端工場の視察などで、日本の技術をPR。来秋にも交通渋滞緩和を目指す円借款案件のMRT(都市高速鉄道)の国際入札が計画され、鉄道メーカーなどが水面下で動いている。世界銀行は同国のインフラ市場を10年間で約10兆円と試算する。

 

こうした中でバングラを消費市場や生産拠点として重視する動きも相次ぐ。今月にはカード大手ジェーシービー(JCB)がプライムバンクとの提携を通じ、クレジットカードの発行を開始。三菱ふそうトラック・バスはアジア・アフリカ向け戦略車のトラックを発売した。

 

急成長する化粧品・日用品市場では、ロート製薬がリップクリームや洗顔用品で拡販するほか、ホンダ、味の素なども市場開拓を狙う。

 

日本貿易振興機構(ジェトロ)の河野敬ダッカ事務所長は「親日や安定した経済成長など魅力は大きい。競争が少ない点も有利」と話す。

 

中国と比べ約5分の1という安価な人件費も魅力でチャイナプラスワンの進出先として注目される。すでに「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングや伊藤忠商事、ハニーズなどアパレル業界が委託生産を増やしている。

 

日本政府によるバングラへの支援には、安倍首相が重視する南西アジアの安全保障が背景にある。「中国はベンガル海域での港湾拡張など軍事力の増強を図っている」(政府関係者)ことに対応、経済協力で中国を牽制(けんせい)したい思惑もにじむ。

 

産経新聞 6月18日